ビッグバンドジャズの今
ジャズの現在の立ち位置
ビッグバンドときいて多くの人、特に20代30代の人にとっては何それ?という答えが返ってきそうですが、それほどその存在が過去の遺物になりつつあるような気がしています。
グレンミラー、デュークエリントン、ベニーグッドマンといった名前を知っている人の多くは50~60代以上の方々ではないでしょうか。
思えば、彼らが活躍したのは1930~1940年代ですから今の若い世代が知らないのも無理はありません。
ジャズが日本に入ってきて約100年前後、その形態には様々なものがあり、カルテット、クインテットなどの4~5人の小編成のグループ、ビッグバンドと呼ばれる15~20人編成のバンドが活躍したのは、戦後数年のダンスホール(主に社交ダンス)での演奏、そしてテレビの音楽番組のバックバンドとして重宝された1980年代位がピークではないかと思われます。
一つの音楽がブームになったり、廃れたりするのはある意味時代の要請であるとも言えますのでジャズもその仕組みから逃れるわけにはいきません。
今の時代はすべてが混沌としているように感じます。
CDというメディアの衰退が言われ、どんなジャンルも売れなくなっている現状では必然のごとく
どんな分野でもメガヒットというものが生まれにくくなっています。
上図は2017年のアメリカでのジャンル別売り上げの割合です。(Nielsen発表)
これをみるとジャズの売り上げは本場アメリカでさえもクラシックと同様に全売り上げのわずか1%にすぎません。これは極端に言えば絶滅危惧種といっても過言ではないほど愛好家が少なくなっていることを表しています。
これは日本でも同傾向にあると思いますが、一方で各地で開かれるジャズフェスティバルなどは結構盛んで、観客もそこそこにいます。
ということは、根強いファンはそこそこいるけれど音楽ビジネスとしてのジャズは成り立っていないという事にもなります。
日本でツァーを行うような名のあるジャズメンも、アメリカに帰れば一晩で日本円で数千円くらいにしかならないライブハウスに出演して凌いでる、というような話も納得がいきますね。
一方で学生や、社会人のアマチュアのジャズシーンはまだまだ隆盛を極めています。
数年前、兵庫県にある高校のビッグバンドをモデルにしたといわれる「スィングガールズ」という映画が話題になりましたが、吹奏楽を基にするビッグバンドは全国に無数にあります。
この裾野の広さをどう生かすのかがジャズが生き延びていく上での今後の大きな課題になるんだろうと思います。
ジャズだけを演奏しているわけではありませんが、職業として成り立っている楽団としては、警察音楽隊、消防音楽隊、自衛隊音楽隊と宝塚音楽団などがあります。
(他にも大企業が所有している場合もあるようですが・・・)
変わったところでは吹奏楽のプロとして活動している東京佼成ウインドオーケストラというのもあります。
これらを考えると、様式やスタイルが時代とともに変化していくのは仕方のないことで、むしろ一つのことにこだわって生きていくほうがはるかに困難なことといえるでしょうね。
ただ、絶滅危惧種ではあるけれど、絶滅はしない。細々とつながっていくんだろうなという予感はします。ファンがいる限りね・・・
その流れは、次々に現れるグループに象徴されています。
村田陽一ソリッドブラス、角田健一ビッグバンド、熱帯JAZZ楽団、エリック宮城ビッグバンド、小曽根真No Name Horses、など意欲的なグループが活躍していますが、それぞれがその時々の都合でメンバーは入れ替わります。老舗のビッグバンドである原信夫とシャープス&フラッツ、森寿男とブルーコーツ、宮間利之とニューハードなども例外ではなく、いわば名前だけが残っているというのが現状です。
今や純粋なジャズを売り物にし、メンバーも固定でそこから給与が支払われているビッグバンドはアメリカでも日本でもおそらく皆無といっても過言ではないと思います。
そんな中で、関西の老舗ともいえる「アロージャズオーケストラ」が2019年9月のある日、朝日新聞の片面全面広告を載せました。
共演の相手は東京のラテンビッグバンドの老舗の「見砂直照と東京キューバンボーイズ」です。片面全面ですから広告費用も半端ではないと思いますが、老婆心ながら今の時代にこのような企画そのものが成り立つのか不安ですが、もちろん採算あってのことでしょうからいらぬ心配といわれそうですね・・・
とはいえ、ターゲットはオールドファンでしょうからそれなりにまだまだ需要はあるにせよいつまで成り立つのかなという疑問は解消されないままです。
しかし、名前だけが残っているという点では本場アメリカでも同じで、超老舗の「グレンミラー楽団」でさえ、リーダーのグレンミラーが飛行機事故で亡くなってすでに70年以上になろうとしていますが楽団名はいまだに残って日本にも何度も公演に来ています。
それでも興行として成り立つのは“インザムード”“茶色の小瓶”“真珠の首飾り”“アメリカンパトロール”“ムーンライトセレナーデ”といったヒット曲を数多く持っているからにほかありません。
グレンミラーに限らずデュークエリントンの“A列車で行こう”や、ベニーグッドマンの“シングシングシング”などのヒット曲の数々がいずれも80年以上前に作られたもので、それ以上のものがこの80年間作られていないという現実があります。
いわばジャズの名曲はすでにクラシックになっているともいえます。
先述の意欲的なグループの中でもエリック宮城ビッグバンドなどはオリジナルも多く手掛けていますが、往年の名曲に匹敵するほどのものが創られていないという事なんでしょう。もちろん技術は当時より数段上だと思いますが、ジャズファンに納得され、高校生でも取り上げられるようなシンプルでかつインパクトのある曲を創るというのは至難の業なんでしょうね。
モーツァルトやベートーベンの時代の交響曲をなかなか超えれないクラシックの世界と共通する部分かもしれません。
もう一つ、クラシックとジャズのビッグバンドの共通点があります。
それは演奏者が基本的には座って演奏し、かつ全員が楽譜を見ながら演奏するという点です。
それが伝統的なスタイルなんでしょうが、これはロックのような聴衆にアピールするという視点が決定的に欠けていることになります。
この点だけでも改善できればもっともっとファンは増えると思いますがいかがでしょうか?
さらに、ジャズ界低迷の現状打破には①に世界的スターの登場、②にヒット曲の誕生が待たれるところですが、えっ?私にその資格があるかって? う~ん!
①はどう転んでもなし、②は0.000001%くらいの可能性はあるかもというところですね。
“言うは易く行うは難し”
でした。(^0^)
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