大中恩さんの心意気
作曲家の大中恩さんが94歳で亡くなられた。
「椰子の実」を作曲された大中寅二さんの息子さんだという。
といわれてもピンとこない人でも「さっちゃん」「犬のおまわりさん」を作曲された人と聞けば顔は知らなくとも曲はすぐ思い出す人も多いのではないでしょうか。
童謡や歌曲、合唱曲の作曲は生涯で2400曲に及ぶという。
決して注目される分野でもなく社会的な評価が高かったとは言えないかもしれないですが、合唱を経験された人なら一度はその作品を歌ったことがあるくらいのその分野での功労者だといえると思います。
彼の思いはただ一つ、「誰もが簡単に口ずさめる歌」作りを心掛けることだったそうです。
それは思うに偉大な父の思いを継承することだったのではないでしょうか。
父の大中寅二さんが作られた「椰子の実」は戦地で戦った多くの兵士に郷愁と癒しをもたらしたといわれています。
私も初めてこの曲を教科書で教わったとき“きれいな曲だなぁ”と子供心にも深く印象深かった思い出があります。
大中恩さん自身も戦地に赴き、実際に戦争を経験されて得た思いは言葉にされなくても相当あったのではないかと想像できます。
他者を思いやる気持ち、それが「さっちゃん」「犬のおまわりさん」「おなかのへるうた」に代表される童謡であり、若い世代に提供し続けた合唱曲の数々ではなかったでしょうか。
思うに2世といわれて名を成す方は親が偉大であればあるほどその重圧は大きいものです。その中でも特に音楽家の2世は親の七光りで跡を継げるほど簡単なものではないと思います。
その血を継ぐことはできますが才能まで継げるかは疑問ですし、本人に相当の努力がなければ厳しい世界です。
なにせ認められないと生きていけない世界ですからね。
2世音楽家と聞いてすぐに頭に浮かぶのは服部良一さんの息子の服部克久さん、その息子の服部隆之さん、宮川泰さんの息子の宮川彬良さん、森山良子さんの息子の森山直太朗さん、藤圭子さんの娘の宇多田ヒカルさんなど数えるくらいです。
その意味でも大中恩さんは音楽家として立派に生きてこられたと思います。ヒットメーカーだけが作曲家・音楽家ではないということを再認識させられたような気がします。
コメントを投稿するにはログインしてください。