大阪都構想は本当に必要か?
2015/02/21
いわゆる「大阪都構想」を実現するための「特別区設置協定書」が昨年10月の大阪市議会に於いて否決されたにもかかわらず、突如として復活し、2015年2月初旬の段階で正式に議会で承認されていないにもかかわらず、協定書の是非を問う住民投票が5月17日に実施されるのが決まっているという、この不可解な流れはどう考えても不自然なので一府民として素人なりに整理してみたいと思います。
そもそもなぜ大阪都構想なのか?
バブル経済の崩壊の1990年末頃から大阪の経済地盤の低下が著しく、2008年に知事になった橋下徹氏が東京に対抗するには大阪市と大阪府が一緒になって東京都のような行政の仕組みにするのが一番だという着想で打ち上げたのがスタートである。
しかしこれは橋下氏のオリジナルな発想ではなく、古くは60年前から、新しくは前任者の太田房江氏も唱えていたことでもある。
しかも橋下氏は知事になってすぐの府議会議員の質問に構想には否定的な答弁をしていた。
それが急に変わったのはシンガポールを訪問した2010年からである。
これは私の推測ですが、シンガポールでみたカジノの集客力やお金の流れに強く影響されたのだと思っています。
事実、それ以降カジノ誘致に急に熱心になっていく。
早い話が単なる思いつきの発想でしかないのではないかと思う。
なぜならそこに至るまで十分検証した形跡が見られないからです。
しかしながら、そこからの動きは良くも悪くも素早かった。
地域政党「大阪維新の会」を立ち上げ、あっという間に大阪の政治地図を塗り替えるまでになった。
それはひとえに彼の実行力と認めざるを得ない。
詭弁に満ちあふれてはいるが、その卓越した話術と若さに人々は期待したに違いない。私も少なからず期待していた。
大阪都構想のメリット
橋下氏や維新の会は当初から大阪都になると下記のようなメリットがあると述べている。
1.大阪府と大阪市の二重行政が解消される
2.大阪が一つになって無駄を省くことで毎年4000億円が生みだされ、
それを原資に成長戦略としてつぎ込むことが出来る。
3.260万人の大阪市を30万人位の8~9の特別区に分割し、区長や
区議会議員を選挙で選ぶことで市民サービスがより身近になる
実現すれば大阪は今よりはるかに豊かになってデメリットはなく、いいことずくめであると・・・・
しかし、これまでの検証から4000億円ものお金はどこにもなく、逆に新庁舎の建設やコンピュータシステムの改編で初期投資が700億円、毎年のランニングコストが20億円発生することがわかってきました。
無駄をなくすのが当初の目的だったはずが、逆に無駄が増えるという皮肉な状況になりつつあります。
大阪都構想のデメリット
では本当にデメリットはないのでしょうか?
何か大きな変革をしようとすれば何かしら良い点悪い点があるものです。
色んなところで色んなことが言われていますが、それらをまとめると大体次のようなものになります。
1、大阪府の借金は現在約6兆円、しかも毎年増え続けていますが
大阪市の借金は現在約3兆円ながら毎年減り続けています。
なので、この府市再編は大阪府の借金を大阪市の税収や資産を
府に吸い上げることで減らそうという意図がみられること。
そのことで大阪市民の生活は区役所が遠くになったり、
健康保険や住民票などの市民サービスが一部事業組合に
任されることで確実に不便になるだろうと予測されること。
2、4000億円の捻出が困難になった時点で、成長戦略に回す資金は
どこにもなく、新庁舎の建設やランニングコスト増で益々
借金体質になるだろう。
3、大阪市を5つの特別区に再編(大阪市を解体)することで
政令都市として持っている様々な権限を失う。
4、とどのつまりは政令都市としての大阪市が消滅するということ。
色々言われる中で私が一番危惧するのはコストが高くつくだけでなく、特別区再編で地域コミュニティが崩壊することではないかと思います。
橋下氏は学校同士を競争させ、人気のなくなった学校を統廃合する政策をとろうとしています。そのことで失われる地域の絆はがまんしてもらうとまで発言しています。
彼の発想には地域の絆とか、育まれる文化とかは眼中にないのでしょう。ということは血の通わない政治が強引に進められるということです。お金を生むか生まないかが彼の全ての判断基準に思えてなりません。
現に、知事時代に大阪センチュリー交響楽団の補助金を廃止し、市長になってからは100年近い歴史を持つ大阪市音楽団を廃止、大阪固有の文化である文楽への補助金を廃止・・・と列挙にいとまがないほど文化に対して全く価値観を持ち合わせていないことがよくわかります。
能や狂言に興味のある人は変質者とまで言い放っています。
ここまでいくと反論するのもあほらしくなります。
むしろ幼年期に恐らくまともな情操教育を受けてこなかっただろうと思えて不憫ささえ感じ、かわいそうになってくるくらいです。
毎週末にタウンミーティングと称して賛成票の掘り起こしと、反対派の罵倒に明け暮れる彼らの言い分だけをうのみにして大阪の未来を決めるのは余りに危険だし、お粗末といわざるを得ません。
そこで私の個人的な判断よりも一応学者の意見として下記をご参照ください。
京都大学大学院教授で内閣参与という肩書をもつ藤井聡氏の分析です。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/01/27/fijii/
この意見がネットに掲載された1/27以来、ツイッターは勿論、市長ぶら下がり会見などで橋下氏の猛攻撃が始まりました。
個人攻撃や公開討論よりも文書には文書で一つ一つ反論すればいいと思いますが、話術には長けていますが論理でまとめることは苦手なのかもしれませんね。
いづれにせよ政党同士の裏取引によって住民投票が5/17に実施されることは間違いないでしょうが、この住民投票も実は非常にいい加減なものです。
大阪の将来を決める投票ですからせめて最低投票率くらいは定めて欲しいと思いますが、どこで誰が決めたかわかりませんが投票率に関係なく、多く取った方で決まるというものです。
つまり、極端な話100人しか投票に行かなくてもそのうち51票取った方が勝ちということになります。
これはとても不公平な選挙です。
つまり棄権という行動が反対にも賛成にも反映されないということ。
反対だから行かないというのは意思表示されないという意味で賛成とかわらなくなってしまうとことです。
声を上げるという行動はエネルギーのいることですが、大阪市民の皆さんにはせめて人任せにせず自分で考えて投票してもらいたいと思います。
今回の住民投票は個人の誰かやどの政党に投票するかではなく、あなたやあなたの家族、あなたの地域の将来をあなた自身が決める投票ですから・・・・
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